あなたは、覚えているだろうか?
はじめて好きな女の子とデートした日のことを・・・。
前日から緊張で眠れず、当日の朝も早起きをして鏡をチェックする。
そして、いつもより早く家を出て待ち合わせに向かう・・・
甘酸っぱい思い出だ・・・。
私もネットビジネスの対面コンサルをするときは初恋のように、期待と不安が入り混じ不思議な気分になり、なかなか慣れることがない。
なぜなら私は過去に何度もものすごい対面コンサルをしてきたからだ。
・カニ
・大仏
・ヤンキー
思い出しただけでメガネがほくほくと曇り、鼻がツンとなるのだが、今回も私の話を聞いて欲しい。
私はまた、会ってしまったのだ。またまた会ってしまったのだ。
その日も今日のような夏の終わりかけの日だった・・。
きっかけはやはり深夜にもらった一通のメールだった。
「よくぞホームぺーヂとメールマガヂン作ってくださいました!わしは感銘を受けました、ぜひぜひ先生とお会いしてコンサルチングという奴を受けてみたいです。私はもう70過ぎになりますが、一度ネットで稼ぐという経験をしてみたいのでございます。つきましては貴殿との対面コンサルチングを所望いたします・・・・。」
・・・・
・・・・・・・
・・・・危険だ。
・・・・・またこれは危ないケースだ・・・。
だが文面はものすごく丁寧だ・・・。年配の方が頭を下げてコンサルチングを申し出ているではないか?
こんなに熱望しているのならば一度ぐらい会って判断しても良いのではないか?
そう思い、私は意を固めて、はじめて私は私の父親より年上の70代の方と渋谷のビルヂングでコンサルチングに及んだ・・・・。
その時の対面コンサルチングの場所は渋谷の奥にある古びたカフェだった・・・。今はもうほとんど知られていない純喫茶と呼ばれる場所だ。
待ち合わせはカフェの中でと言うことなので、初デートのように緊張して私は喫茶店のドアを開けた。
カラン♪コロン♪カラン♪
懐かしいドアベルの音と共にカフェに入る。
薄暗いカフェの奥には一人の男がいた。
彼のことはあらかたメールで聞いていたが、70代とは思えないほどのしまった体つきで、ジーンズを着こなし、颯爽としている。
小柄で禿げあがった頭を除けば、雑誌LEONに出て来てもそん色のない外見なのだ・・。暗闇で光る眼光は鋭く、今までビジネスをやってきたオーラを放っていた。
彼は私と会うなり身の上話を始めた・・・・。
聞いてみると彼は長い間イタリアに住んでおり、輸入ビジネスに関わってきたらしい。さらに実は妻もイタリア人だと言う。
私は内心思った「すげー!!さすが70代からコンサルチングを受けてみようと思うだけはある。こういう人と初めて会った!!!」
私「なんでまた若いころに海外にいたんですか?」
彼「やっぱり、漢なら海を渡りたいじゃない?あなたも留学してたんでしょ?」
私「いやいや、僕なんて勉強だけですから・・・。」
彼「まあね?でもそりゃやっぱり漢は船に乗って旅に出ないとね!!
私「イタリアでどんな仕事をしていたんですか?」
彼はそのまま、自分の過去の人生経験を語りまくった。そしていくつかの人生教訓を私に語りだした。
・・・「うぐ。なんてでかい男だ!!さすが70になると器が大きくなる、この男がどんどん大きく見える・・・。」
そう思って彼の教訓話に聞き入った。
だが、時間がたつにつれ、よくよく見ていると彼が本当に巨大化したように見えるのだ。
なぜなら彼の座り方にはものすごい特徴があったからだ・・。
実はこの純喫茶の椅子は肘掛がなく、背もたれの高い革張りのソファータイプの椅子だったのだが、なんと彼は、自分の頭より高い、背もたれの上に両手を引っ掛けて、足を組んで前のめりになりながら話し出したのであった・・。
・・・その勇ましい姿を見て私は思った。
コンドルだ!!
伝説のコンドルが目の前を飛んでいる!!!
そして心の中でこの男を「伝説のコンドル爺」と名付けることにした・・。
こうして私とコンドル爺とのコンサルチングがはじまった。
「私はうれしくてうれしくて!先生が教えてくれたヘッダー画像といいますじゃろ?あれができたときはものすごくうれしくて、一気にやる気になりました、こんなものがネットにできるなんて・・・・」
「私がイタリアにいたときは、まだバブル前の時ですし、ホームぺーヂなんていうものはなかったもので・・・やっぱりホームペーヂで稼げるなんて不思議な時代になったもんじゃろ??」
「やっぱり当時はイタリアのファッションはほとんど日本に入っていなくて・・・今の日本はすごいじゃろ?」
・・・・
・・・・・・
・・・・・「うぅ。これが本場イタリア仕込みのコンサルチングと言う奴か?」
どこからが質問で、どこまでが人生訓なのかが全く分からない・・・。
だが集中をしなければならない。一句たりとも聞き逃すわけには行かない。
「そうだ、今日の趣旨を忘れてはいけない。一方的に話を聞くだけでは私の思う個別指導にはならない」
そこで勇気を振り絞って、恐る恐る私はコンドル爺にこう尋ねた。
・・・・・「えっと、すみません、○○さんは一体何系のブログを作っていらっっしゃるのでしょうか?」
すると、コンドル爺は猛禽類のような鋭い眼光を見せつけながら、私に一言こう言い放った。
・・・
・・・・
・・・・・・
「出会い系じゃ!!!!」
・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「ぎゃぎゃぁ!!私は地面を走る小動物がハンターに襲われたときのような声を出した(心の中で)」
恐るべしコンサルチング。
まさか70代を過ぎてそのジャンルに入るとは!!
話してみると実は彼は新しい恋人がいる様子で、元奥様とは別れていた。
そして今の恋人は何と出会い系で会ったというのだ。その素晴らしい出会いをブログで表現して稼ぎたいということなのだ。
そう、テーマは70代の恋だ。
私は必死に考えた。70代の恋・・?
「・・・マディソン郡の橋???みたいな奴ですか??」
なんとか瞬時に思い出せたのがこの映画だった。するとコンドル爺は途端に目を細めて自分の恋愛話し始めた・・。
「やはり付き合うなら年下じゃー。やはり若い子はえーのー。付き合うなら年下がえーのー。肌がぴちぴちしおってえーのー」
私は話の途中で浮かぶ、亀仙人の映像をなんども振り落とし、コンドル爺の話を耳を傾けた。
「やっぱり恋はえーのー。気持ちを若返らせるのーぉ。わしはまだ渋谷でデートをするんじゃよ? やっぱり若い子に限るのぉ・・・」
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
こうして2時間半に及ぶ、伝説のコンドル爺とのコンサルチングが終わった。
・・・恐るべしコンサルチング。
コンドル爺とは喫茶店で別れ、私はそのまま渋谷の109の前に向かった。
109の前には初デート待ち合わせをしている男女がスマホを見てそわそわしていた。
「・・・・70代の恋か・・・・フッ」
そうつぶやくと私は渋谷の改札口へと向かった。
おしまい。